MP3 (MPEG-1 Audio Layer 3)は本当に自由に使えるようになったのか?

はじめに

ウェブ上のニュースサイトでは、MP3の特許が全て期限切れになったとか、 ライセンシングプログラムが終了したとか報じられているが、 本当に日本で自由に使えるようになったかどうか検証している記事は ないような気がする。

Red HatのFedoraプロジェクトが、MP3のデコーダーとエンコーダーを 含めるようになったそうなので、自由に使えるようになった国がある のは間違いなさそうである。

以下では、実際の特許公報を確認して、日本において自由に使えるように なっているかを確認した結果を記載する。

まずは、該当する特許を探さないといけない。 ライセンシングプログラムが終了してしまったので、mp3licensing.comでの一覧は閲覧できなく なってしまった。achive.orgで確認することにする。

日本の特許の個別確認

mp3licensing.comのPatent Portfolioのページ で、日本の特許については、Country欄がJPになっているものである。 以下にJ-PlatPatで確認しつつ、JPの特許を引用する。

出願番号 出願日 特許公報番号 件名
昭62-131971 1987年5月29日 2792853 オーディオ信号の伝送方法及び装置
平05-507340 1992年10月6日 3640666 音響的又は光学的信号を伝達及び/又は記憶する際の周波数クロストークを減少させる方法
昭63-019726 1988年2月1日 2801197 デジタルオーディオ信号の伝送方法
平5-508077 1992年10月13日 3421726 複数の依存し合うチャネルのデジタル信号を伝達及び/又は記憶する際にデータを減少させる方法
昭61-40515 1986年2月27日 1814067 オーデイオ信号の伝送方法
平02-505932 1990年4月12日 2739377 デジタル式コード化方法
平03-158029 1991年6月28日 3187077 オーディオ信号のコード化方法及び装置並びにデコーディング法及び装置並びに伝送方法
平06-510567 1993年11月2日 3792250 多チャンネルのデジタル信号を送信及び/又は記憶する方法
平02-508354 1990年5月17日 3065343 信号伝送方法
平02-502338 (mp3licensing.comの番号90/00143は誤記か?) 1990年1月26日 3226537 オーディオ信号の符号化方法、オーディオ信号の復号化方法、オーディオ信号の伝送方法、及び各方法を実施するための記録装置
平09-535776 1997年2月19日 3103382 低サンプリング・レートでデジタル化されたオーディオ信号を符号化する方法
昭62-505113 1987年8月29日 2796673 ディジタル・コード化方法
平07-524319 1995年2月2日 3193921 複数のオーディオ信号を符号化する方法
平09-106182 1997年4月23日 4173209 (mp3licensing.comには記載なし) ディジタル化されたオーディオ信号の符号化方法及び装置
平02-515128 1990年10月8日 3222130 オーディオ信号の符号化方法、ディジタルオーディオ信号の伝送方法、復号化方法、及び、符号化装置、復号化装置
平07-508926 1995年7月8日 (mp3licensing.comの記載1994年7月8日は誤記か?) 2800068 少なくとも2つの信号を符号化するために選択される符号化のタイプの決定方法
昭63-507841 1988年10月6日 2858122 デジタル適応変換符号化方法

結論

1814067では、経過情報として、権利が消滅してことが確認できなかったが、出願日から考えて、消滅していると考えられる。 3103382では、経過情報が2016年8月30日から更新されておらず、権利の消滅を確認できなかったが、出願日から考えて、消滅していると考えられる。 4173209では、経過情報が2016年8月9日から更新されておらず、権利の消滅を確認できなかったが、出願日から考えて、消滅していると考えられる。 他の特許については、経過情報のページより本権利消滅日が2017年5月27日より前であることを確認できた。

よって日本ではMP3フォーマットはデコード/エンコードともに自由にできるようになったと考えられる。 また、他の国についても。特許の権利を行使できる期間が20年であるとすると、mp3licensing.comに記載出願日が正しければ、全ての特許は権利が消滅していると考えられる。

pkgsrc/audio/lameは、LICENSE=lame-licenseは消して良さそうだ。

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